売り掛け(うりかけ)とは、客の飲食代金をその場で支払わずに後日精算する方法、及びその未精算代金そのものの事。
キャバクラ業界に限らず、企業間取引の場合には、仕入れ代金支払いは2ヵ月後など売り掛けを一般的に行っているが、キャバクラ業界の売り掛けもほぼ同じような意味(=後日精算)である。

元々は、クラブやスナックなど企業の接待で使用される場においては、頻繁に店舗を利用するために各個人の都度精算ではなく、月末締めで会社宛に請求書を送って経理から支払われる、という流れが存在していた。
この売り掛けの流れを個人に当てはめることで、来店時に持ち合わせが無くともシャンパンやボトルなどの高額なサービスを提供できる事になり、水商売一般での売り掛けという概念が広がっていった。

ただし、一般的にキャバクラでは売り掛けはできない。
売り掛けという概念があるのは、クラブ、スナック、ホストクラブ等であり、当然ながら店と信頼関係を築いた常連客のみが売り掛けを行うことができる。

キャバクラでは、お客さんの飲食代金の回収責任はキャバ嬢ではなく店舗に生じる。
そのため、客がドンペリをオーダーしてお会計が10万円になったが財布に1万円しか入っていない場合でも、キャバ嬢に責任は問われず、最寄りのコンビニATMへの付き添いや、家族の呼び出しで支払いしてもらうなどの各種回収についてもキャバ嬢には一切関係なく店舗(=ボーイ)が行う。そのため、キャバ嬢の判断で売り掛けをさせる事は出来ず、売り掛けというシステムが機能しない。

一方、クラブやホストクラブなどの場合には、お客さんの飲食代金の責任は、接客担当のホステスやホスト側に生じる。
例えば、お酒の勢いで常連客が200万のボトルを入れて売り掛けにして、後日未清算のまま行方不明になった場合、担当のホステス、ホストが200万円の支払いを客に代わって店に支払うことになる。そのため、客の懐具合を見ながら、売り掛けさせても良い額かどうか、無理させて売上を上げるか否か、個人で判断することが求められる。

キャバクラでは売り掛けのシステム自体が無いが、近年ホストクラブでも売り掛けというシステムを無くすような動きも多い。これは、売り掛けの回収というホスト個人にとって負担が大きい業務をなくして、接客に専念させた方が結果として売上が伸びるという考えや、求人募集の際に売り掛け制度が無い店を選ぶホスト希望者が多いことなどが原因である。
ホストクラブの業態の一つとして、俗に言う『メンズキャバクラ(=メンキャバ)』では、実際に売り掛けが禁止の店も多い。

キャバクラ、おさわり系のキャバクラ、ガールズバーなどは、まず売り掛けという制度自体が無いと思っていた方が良い。
よくドラマや漫画などで、売上を上げるために売り掛けをさせて回収不能になっているホステスなどの話もあるが、あれは完全に高級クラブなどのホステスであり、キャバクラを中心とするキャバ嬢の世界では一切ないということだ。